よく眠ることは身体と心の健康のもと
眠りが質的にも、量的にも満足の行かない状況になった場合、待っているのは生活習慣病です。それだけでなく、不眠は心の病であるうつ病に影響を及ぼします。さらに、不眠や睡眠障害は、昼間の活動に支障をもたらし、寝不足による傾眠状況からの不注意が、大きな事故につながりかねません。
つまり、よく眠ることは生活習慣病の予防になるわけです。特に、眠っている時に、呼吸が一時的に止まる、睡眠時無呼吸症候群は放置しておくと、高血圧、糖尿病、脳卒中、心臓病など、リスクが高くなるので注意を要します。
一方の心の健康についても、よく眠ることが大事になります。眠ろうとしても眠れない、熟睡感がない、夜中に何回も目が覚める、朝早いうちに目覚めてしまう、疲れが残っていて眠れない、などの症状は、明らかに心の問題としてクローズアップされます。要は、睡眠による休養が取れない状況に陥っています。
こういった眠れない状況が続くと、当然のことながら、ぐっすりと眠った感覚はなく、気持ちは沈み、積極的の物事に取り組むことができなくなり、それで済めばいいのですが、自分がライフワークにしていることにも関心を示さなくなることが起きます。
このように眠れない症状が続きますと、うつ病になりやすいこともわかっています。そしてそれだけでなく、身体にも影響を及ぼすようになってきますので、注意を要します。こう考えますと、いかによく眠ることの大切さが見に沁みて理解できるのではないでしょうか。
よく眠ることで、仕事の能率も上がります
眠りが足らないと日中に傾眠に襲われます。これすべて睡眠不足がなせる業。眠りが足らないと結果的に仕事の能率を下げることになり、これは個人の問題として簡単に済ますわけにはいかなくなります。特に、大事な案件があった際には最大の注意が必要になります。
個人個人によって、必要とする眠りの時間は異なります。となれば、個々の人は自分が必要とする眠りの時間を事前に知っておくことが大切になります。
なぜなら、眠りが足らない理由で、作業能率の低下があったり、注意力が散漫になり生産が下がったり、それに加えて、事故が起きたりすることも考えられます。最悪なのは、そのことが、眠りが足らないことで起きていることに気が付いていない場合があります。
そこで、少しでも足らない眠りを取り返すために、休日に寝だめをする人がいますが、実際問題として、眠ることを貯金みたいに貯めることはできません。
本人は寝だめをしているつもりかもしれませんが、その日の夜の入眠に際には、何回も寝返りを打つような仕草を繰り返し、悶々として眠れない夜を過ごすことになりかねません。
よく眠ることは自律神経に影響を及ぼします
皆さんは自律神経という言葉、聞いたことがあると思いますが、実は、この神経は私たちにとっては、なくてはならない神経なのです。というのは、私たちの内臓や血管を意識とは関係なくコントロールしている、生命維持神経といっても過言ではありません。
自律神経には、一つは活動を促す交感神経であり、もう一つはその交感神経と拮抗し、休息の働きをする副交感神経(迷走神経)の二つの神経があります。
自律神経のバランスが崩れると、内臓は機能低下を起こしホルモンの分泌異常、そして血管は収縮して血液の循環を損ない心身に不調を起こします。
実は、その自律神経がよく眠れることに関係しているのです。お分かりの通り、よく眠れることに関係している神経は休息の働きをする副交感神経です。朝の目覚めから活動を円滑にするために交感神経が優位に立ち、緊張感が連続する中にあっても、仕事をやり遂げることができます。
そして、疲れ切った心身は休息を求めます。その際に、初めて副交感神経が優位に立ちます。特によく眠ると、内臓をはじめ、血管も緊張状態から解放され、ホルモンの分泌も促進し、心身がリフレッシュした状態に戻ります。
よく眠るためは副交感神経を優位に!
この状態で目覚めれば、すっきりした気分で一日を過ごすことができます。日中に傾眠することもありませんし、作業能率が下がったり、注意力が散漫になったり、事故が起きたりすることもありません。
反対によく眠れない状態になると、休息の神経である副交感神経に代わって、活動の神経である交感神経が優位に立ったまま、夜を過ごすことになり、緊張感が持続することになります。
これでは、朝の目覚めの悪さが一日を通して続くことになり、心身共に疲れ切った一日になってしまいます。
したがって、逆に言うと副交感神経を優位に立てれば、よく眠れることになります。呼吸法や自律訓練法、ヨガなどは、まさに副交感神経を優位にするための方法です。
それでは、ここで自律訓練法について説明いたします。自律訓練法の基本は呼吸から始まります。いわゆる腹式呼吸です。仰向けになって胃の周辺に手を置いてお腹が呼吸をしてみてください。お腹が膨らめば、正しく腹式呼吸をしています。
皆さんも経験があると思いますが。緊張している時の呼吸は浅く、不規則になるだけではなく、心臓の鼓動も早くなります。一方でリラックスしている場合は、呼吸は意識しなくても深くなり、心臓の鼓動も穏やかで、手足が温かくなります。
深呼吸を繰り返していると、ご自分の呼吸パターンが分かるようになってきます。そして、呼吸によって緊張を緩める方法を理解すると、リラックスの状況がどんなものであるか、身体が覚えてくれます。
健康診断で血圧測定に際に、よく深呼吸をしてくださいと言われますが、あれは交感神経優位の緊張状態から、副交感神経優位のリラックス状態にするために、呼吸法を用いています。
よく眠るための自律訓練法
自律訓練法はリラクッスしている時の感覚を、自分が意識的に作り出す方法です。手足に集中して温かい感じ、重たい感じを身体で受け止め、リラックスした状態の生理的な感覚を認識します。手足で温感を感じられるのは明らかに血行が良くなっている証拠で、ストレス状況にある末端の血行不良とは、反対の反応を示していることになります。
こうすることで、身体はリラックスした状態を感覚的に覚えこむので、緊張を強いられた時などにはこの感覚を思い出して、リラックス状況を作りだせばいいことになります。
具体的には、まずは仰向けに寝ます。両手老足を軽く広げ、ゆったりとした気分で身体全体の力を抜きます。
① 正しい呼吸法を意識して吐くときに緊張感を解きほぐします。そして、右利きの人は、利き腕のほうから、右腕が重たい。右腕が重たいと、何回か繰り返します。すると、確かに腕に重さを感じます。
② そうしたら、今度は左腕に移ります。左腕が重たい、左腕が重たい。すると、同じように左腕が重さを感じます。
③ 次は、足です。同じように右足、左足と続けます。もちろん、ゆったりとした呼吸を続けます。
④ 今度は、首と肩に移ります。
これが一通りできると、身体の重みがなくなって、それこそ宙に浮いた感じになります。その上に、気分が穏やかになっているのに気が付きます。
⑤ 重感をマスターしたら、今度は温感です。重感と同じように右腕が温かいから、首と肩が温かいまで繰り返します。
これは基本ですが、さらにこの上を行くと、心臓の鼓動や呼吸、腹部、額と拡がりを見せます。
いずれにしても、自分が恣意的に自律神経をコントロールできることを学んで欲しいものです。
一週間、二週間、三週間、一カ月と時を重ねるにつれて、緊張感からリラックス感への移行がはっきりと分かるようになります。
よく眠ることの重要性
眠りは手術や薬を用いずして、私たちを心身ともに立ち直らせてくれる優しい生理的な現象です。どんなに疲れていても、眠りさえすれば心新たに次のステップにチャレンジすることができます。しかしながら、悩める人間は、理想通りにはいきません。といって、それから逃げるわけにもいかないのです。
これまで、いかに眠りが私たちに心身をリカバーしているのかを述べてきましたが、よく眠ることの重要性をお分かりいただけたと思います。しかしながらその一方で、心配事やストレスで眠れない一夜を送る人が多いのも事実です。
それでもよく考えてみてください。心配事があるのにぐっすりと眠れるのは果たして正常と言えるでしょうか。心配事があれば、悶々と考え事をして眠れなくなるのは当然のことです。こちらのほうが正常な反応なのです。それでも、解決が難しい心配事があっても、それに立ち向かうのが私たち人間なのです。解決まで間、せめて心身のバランスを維持するために、呼吸法や自律訓練法でよく眠れるまでにはいかなくても、明日につながる道のために、努力を惜しまないで欲しいものです。