相手を「利用するため」に褒めないーおだてない
まず前提として大切なことは、その「動機」です。 相手を良い気分にさせて、なにかと便宜をはかってもらう、つまり「相手を利用する」ために褒めるべきではありません。お世辞や、おべっか、あるいは、おだてることもそうですが、これらは、相手を良い気分にさせることはあっても、その人を伸ばすことにはつながりません。歯の浮くようなお世辞の問題は、やはりそこにウソがあることです。
ウソを言ってまで機嫌を取り、なぜ覚えをよくしようとするのか、そこにやはり不純といえば不純なものがあります。相手を利用しようとして褒めるのではなく、本心から、真心から褒めること。褒めるときは、それが「本心」からのものであるか、機嫌をとろうとしているのではないか、確認する習慣をつけましょう。
相手の伸ばす褒め方ー相手が気付いていないことを褒める
そして、次に大切なのは、相手自身のため、相手の成長につながるものであることです。その観点から考えると、「相手が気付いていないことを褒める」「もっと自信をもっていいときに褒める」という方向性が浮かび上がってきます。
当たり前」ではないことを、具体的に指摘する
相手の気付いていないことを褒めるにはどうするか。 良い仕事や判断でも、相手は、それが「当たり前」だと思っている、しかし、第三者から見ればそうではない、そういうケースが往々にしてあります。 そういうときに、それすごいね、良いねと感じたことを、具体的に指摘してあげることで、相手は、初めて自分の優れた点を認識できることがあります。気付いていないことですから、できるだけ具体的なことに即して褒める必要があります。褒められた側もはじめて「なるほど」と思い、嬉しくなるのです。
すぐその場で褒める
また、十分に気付いていないことですから、あとで記憶が薄れたときに褒められるよりも、記憶も鮮明な時に褒められるほうが望ましいもの。できるだけ、その時、その場で褒めることです。本人の中でも、すぐにフィードバックされたほうが、身につけやすく、教育効果も期待できます。
ワンパターンな褒め方はしない
ワンパターンに同じことを褒めるのは避けましょう。本人が既に十分に気付いていることを重ねて指摘するのは、あまり効果的ではありません。 毎回褒められても、褒める側の感動もこもりませんし、逆に、口だけではないかと疑われることにもつながります。 すでに本人が認識しているならば、ことさら言わなくていいのです。 いつも同じことを褒めていないかチェックしましょう。
相手を伸ばす褒めかた―もっと自信を持っていいときに褒める
また、相手を伸ばすには、「もっと自信を持っていい」ということを褒めるのが、効果的です。
努力を褒める
自信を持たせるという意味では、まだ結果が出ていないとき、つまりプロセスの段階であっても、その努力を褒めるということが可能です。 「その方向でいいのだと」いう意味で、努力を褒める。 背中を押してあげるイメージに近いですが、それによって部下も迷いや自信のなさを払拭することができるものです。
第三者経由で褒める
自信につながるという意味では、第三者を経由して褒めるというテクニックもあります。 つまりあえて本人がいないところで、その相手のことを褒めるのです。人づてで後ほど聞こえてきたときに効果を発揮します。自分がいないときに褒めるということは、かなり本気でそう思ってるのだと、大いに自信につながるものです。 直接に、面と向かって褒めるよりも効果的なことさえあります。
相手が十分自信を持っていることについては、それほど褒めなくてよい
先に述べた、「本人が既に気付いていること」と同様に、すでに十分な自信があることについては、毎回、毎回それを褒める必要はありません。 「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉もありますが、自信過剰にする必要はありません。時折指摘すれば十分でしょう。
褒める」と「叱る」のバランスをとる
人を伸ばすには、褒めることと叱ることのバランスも大事です。 「注意」をする前に、少し褒めるというテクニックもありますし、叱った後に、「でもお前のここは、本当にいいと思っているから」、と言葉を添えるやりかたもあります。 そうしたメリハリや、俗に言う「飴とムチ」というものも、指導者としては時に必要になることがあります。
人は、全てがダメなわけでも、全てが素晴らしいわけでもありません。全否定でも全てを肯定するわけでもなく、是々非々の姿勢で、褒めると叱るのバランスをとりましょう。
まとめ
P.F.ドラッカーは、リーダー(マネジメント)の役割を、人の「強み」を組み合わせ、組織の成果を最大化させることとしています。人を「褒める」というマインドや、「視線」は、その人の「強み」を見出すためにも必要なものでしょう。
人間関係の秘訣も、その人の長所と付き合うことと言われていますが、人の良い点を見抜き、上手に「褒める」ことのできる上司がいることで、組織の成果は大いにあがり、職場の人間関係もよくなります。
ぜひとも、人を褒める「達人」を目指したいものですね。